【公平】
「桐宮先輩って……なんか意外だ……」

【弥津紀】
「なにを意外に思うかねえ……
 私にだっていやなことはある」

【弥津紀】
「いやなことをいやと言えない世の中ってのは、
遠からず滅びるよ」

【公平】
「…………」

自分の『いや』を、世界の構造的欠陥にまで発展させようとする言葉には
さすがに沈黙するしかない。

けど―――その沈黙の中で、俺はようやく先輩を見つけたって、
そんな気がしていた。

この路地裏に飛びこんで先輩を見つけて、
つい怒りを爆発させてしまったのは、彼女のことがわからなかったからだ。

その顔、姿を目の前にしているはずなのに、
桐宮先輩という人がわからない、遠い。

だから不安になって、心配になった。

でも今は―――どうだ?